10月14日は紀藤元之介先生の命日・・・「昔の占と今の占」

◆10月14日きょうは紀藤元之介先生の命日です。
四遍筮法という易占いの方法を考案された先生です。
あの太い眉にメガネをかけた紀藤先生が亡くなったのは昭和56年【1981年】10月14日のことです。享年 満63歳。


 お名前の「元之介」は、四遍筮法でえた最初の卦を「元卦」、二番目の卦を「之卦」とよんだところから名付けられたのでしょうか。
 紀藤というのは、本名の木藤に由るものです。
・・・“紀元書房”と紀藤先生は、もちろん非常に深い関係ですが、名前について直接的な関係はないようです。


 むかし・・といっても太平洋戦争が始まる以前のことですから七十年以上もまえのことです・・・「『東の易の鬼』は紀藤氏、『西の易の鬼』は村田氏」と今東光先生が仰ったそうです。

 その『東の易の鬼』といわれた紀藤先生が関西に引越をされ、当初は春日大社で神職につかれ、易の講義をされていたそうです。
 その後、『西の易の鬼』の村田佳穂先生の後任として日本易学協会大阪支部長になり、関西の易の発展に貢献されました。

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◆きょうは紀藤先生を偲んで『昔の占と今の占』というエッセイを紹介します。ちょうど大阪万博の一年前に書かれたものですから、“今の占”といっても48年もまえの占いになります^L^
 《時評的易占》
  昔の占と今の占

       紀藤元之介


 「一箪食一豆羮【※イチタンシ イチトウカン 少しばかり食べ物】」ですごすことのできた昔と、現代とでは何事もちがいます。第一に、歩いても坐っていても、何や彼やと費用がかかりますし 使うものすべてに、直接間接に税金がかかっていますから、山奥で霞〔かすみ〕を食っている人以外、収入をはからずに生きていくわけにはいきません。
原始共産時代からだんだんに知恵づいてきた人間は、封建的な時代をすごし、いまは資本主義的体制がわと社会主義的体制がわと「イズム」争いをし、わずかに水爆所持によって
人類破滅の淵にのぞむのを避けている状態です。


 体制が変れば、法律も道徳も変ります。いまの体制に不満なひとびとが、体制破壊を誇号し、はげしい反体制運動を展開していますが、その運動が成功したらどういう世の中に
なるのでしょう。ひとびとの「こころ」も変ることはまちがいありません。企業という企業(大も中も小も零細なものも)は現在のかたちではなくなるでしょうし、みんなの生活意識もその体制に順応しなければならなくなるから、いままでのような生きかたはできなくなります。好むと好まざるとに拘わらず、統制(こころも行動も)されるでしょう。ほんとうの自由も、自恣〔じし〕も無くなるでしょう。


 が、いまはまだ現体制と反体制のたたかいのさなかです。いろいろ考える余地はあります。私たちの「占い」も当然、世のさまの移りかわりにしたがって、(あるいは「先見性
を必要とするしごと」、だから移りかわりに先立って)新らしい見方、考え方を必要としています。・・・たとえば、徳川時代の雇用契約のひとつの例としてのこっている『二代目嵐雛助と道頓堀の芝居小屋主の訴訟』(易学通変・六十四卦占例集「山風蠱・・・訴訟の利害得失を断じた例」参照)にしても、現代の法規・労資関係と較べたなら、解決法(結果)は至極単純明快です。


「易者のアドバイスによって、お上に訴えたら、契約違反の役者は、お上からきびしいお叱りを蒙って、訴え主のもとで働かされるようになったとサ」でおわりです。


 ところが現代ではそうはまいりません。数年まえのことですが、大阪の零細企業(従業員8人?らい)でストが起き、三人ほどが頑強に戦い社長は病気で倒れ、専務である夫人が矢面に立って抗戦したので、【労働組合の】上部組織が延べ五百人の人海戦術でスト側を応援し、とうとうその企業を潰してしまったという話もあり、又さいきんでは、新聞や週刊誌で周知されている日軽金の見習社員のクビ(東大出の新社員がクビを言い渡されて会社と抗争し、裁判のうえで勝った事件)問題など、古い体制下の考えでは理解できない「労資問題」がいっぱいです。古い観念で「こうでなくては」とか「けしからん」とか云っていたのでは、捌ききれない時代になっているのです。【易爺:今は“派遣労働”という不安定な雇用関係ができてしまった><;】


 私たちは、「親」から相談されることもあれば、対立しているその「子」に相談されることもあります。
 まえに、ある「姑」から相談をうけた翌日、その人の「嫁」から、姑と嫁の問題で相談されたことがあります。
 会社経営者から相談されることもあれば、はたらく人から相談を受けることもあります。・・・諄々と教訓を垂れて済むような時代ではありません。背景となる時代・社会についての認識、その事態の背後に対する洞察が必要なゆえんです。


◆易占でサボタージュを奨めた例
 「易占」によって、私がサボタージュを奨めた例をひとつ挙げましょう。

 或る機械メーカーでは、一年間アフターサービスをしていまして、その期間がきれると、機械が故障したら実費で修理することになっています。その機械を売り出してもう相当
長くなりますので、アフターサービスはもちろん、有料修理も相当沢山出るわけでして、しごとは、沢山ある。こういう時代ですから、その修理の熟練工が足りない。そこで下請に「人を廻せ」という。下請はやむを得ず、だいじな熟練工を親会社に出向かせるが、常傭いで雇っている工員を派遣して、受取るのはそのにんげんの日当だけというわけ。一人の日当を二千円かニ千五百円として、親会社は何万円かの修理をやらせる。下請としては、健康保険や労災保険を負担しているにちがいないから、割りに合わない。
そこで、

「その修理のしごとを請負わしてもらったらどうだろう」という相談です。

 ☰ ☳
 ☲ ☶
同人 小過

元卦 天火同人
之卦 雷山小過

易神のこたえは、この時点ではどうも判らない。
 なぜ同人が小過になってゆくのか?
 ・・・深く占考したくても私のあたまでは駄目です。そこで、


「親会社に申し出て、果して承諾してくれるか?」という占考を立ててみました。

☳ ☳
☳ ☶
震 小過

元卦 震為雷
之卦 雷山小過

之卦は同じ雷山小過です。ここで
「ハハーン 」と判りました。
 こちら(内卦・下)が「修理を請負わせて
ください」と申出ても、先方(外卦・上)は、いまのやり方(現体制)でやってゆけば、濡れ手で粟、労せずして儲かるから、ウンと云わないわけです。内卦の震は、スゴスゴと艮になり、大坎の「大粒の涙」を流して泣き寝入りするほかありません。・・・ふつうなら、ここまでで、

「駄目ですね。先方が承諾しませんよ」
と判断し、能事畢矣【のうじおわれり=なすべき事は終った】というところでしょう。それでも、求占者は、責めないでしょうね。

「そうですか、やっぱり!そうでしょうね」と諦めて・・・。

 “泣く子と地頭には勝てない”ということわざがあります。まあ、そんなことを云って慰めてあげるのも一法でしょう。

 しかし現代の易占は、もっと意欲的であっていいと思います。不可能と見えるようなことでも、挑んでみる、そういうゆきかたをしてもいいと思います。

 そこで、小過を裏返して(卦は風沢中孚になります。)

 ☳ ☴
 ☶ ☱
小過 中孚

「先方とよく話し合ってみたらうまくゆくでしょう」という生卦法による方法発見もありましょう。が、机のうえで算木はかんたんに引っ繰り返すことができますが、事態を好転させることができるか、というと、私は首をかしげざるを得ません。

 そこでもう一度、
「どうしたら、修理を請負うことができるようになるか?」という占的で、卦を起してみました。

☳ ☳
☵ ☵
解 解

元卦 雷水解
之卦 雷水解

解の不変です。不変はふつう「その状態が変らない」ときに出ると見られます。しかし易神はなぜこんな卦を示しにのでしょうか?・・・裏は、☴☲風火家人です。水ももらさぬ親会社と下請という関係から、脱け出せ、解
放を要求しろ、ということです。
「解」はリッシンべんをつければ「懈【カイ・こたる】」です。たとえ苦しくても(内卦坎)忍ぶつもりなら、修理工を「こちらも手不足で困りますので、もうすこしヒマになったら派遣しましょう」と云って出向かせないことにしたらいい、と私は判断したのです。

「修理を要する機械をその会社へ運んだら、さっさと引揚げさせてしまうのです。アフターサービスの修理のほかに、有料修理の機械が山積みになったら、得意先きへの信用維持
がむずかしくなるにちがいない。虫のいい親会社の搾取に対する対策としては、サボが一番です。やってごらんなさい」と私は奨めたのです。

 零細な小企業に対する大企業の横暴を、易神も憎んでいるにちがいない、と私は前記卦示をみておもいました。このような怠業使嗾〔しそう〕を「易精神に悖る」と批判される人もあるかと思いますが、私はあえて一石を投じたのであります。

 いまは、ひろくは世界問題、アジア問題、また国内問題にしても政治・経済・教育・社会・労働問題から老人と若人、男と女のそれぞれの立場、いいぶんなど、深い考察を要請
されています。樹下石上を宿とし、行雲流水を友として、「一箪食一瓢飲在陋巷」子のたまわくと悟り顔をしてはいられない時がきているのです。
・・・『易学研究』S44年3月号より・・・

◇文中にあった『二代目嵐雛助と道頓堀の芝居小屋主の訴訟』(易学通変・六十四卦占例集「山風蠱・・・訴訟の利害得失を断じた例」)については、あとで追記する予定です。

紀藤元之介先生の御冥福を御祈りいたします(合掌)






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